前田拓也ゼミ
社会問題の社会学 ── 個人的・主観的な「問題」を社会につなぐ
わたしは社会学者です。差別や排除にかかわる問題を中心に、わたしたちはどのようにして他者とともに「社会」を営み暮らしているのか、なかでもとくに、「障害者」とされる人びとと「健常者」の相互行為やコミュニケーションのありかたについて、自分で調査/取材したことをもとに考えることを専門にしています。
前田ゼミの目標は、一見「わたし個人の興味や関心」でしかなさそうなことがらを「社会にかかわりのある問題」 = 社会問題として再発見し、その問題のおもしろさや意義を “他者と共有する” 方法を模索することです。
3〜4年次のゼミ生では、あくまで社会学をベースにしながら、自分が「当事者」として考えられそうなテーマを設定し、文献資料や調査データの収集と分析をおこない、最終的に自分で満足できる「社会学の卒論」を書くことを目指すことになります。
わたしたちは日々、「多様な身体のありかた」を通して「社会」を経験し、生きています。しかし、毎日のように歩き、遊び、働いているはずの「街」は、わたしたちの身体にとってかならずしも「やさしい」街ではありません。街にあふれる見慣れたモノや風景が、じつは特定の人びとを「排除」してしまっていることも少なくありません。そこで、2年次のゼミでは、「排除」と「公共性」をキーワードにした街歩き(神戸〜大阪)を実施し、受講生が撮影した街の写真をデータとして積極的に活用することで、わたしたちの暮らす社会が人びとの「身体」をどのようにまなざし、扱っているかを、日常のありふれた風景のなかから発見することを目指します。
ゼミでの学びの成果として、調査/取材や学生自身が設定したテーマにかんする「小さな雑誌(=ZINE)」をつくります。ページを企画し、取材し、写真など記事の素材となるものを準備し、記事を書き、編集し、印刷・製本し、紙の「雑誌」というアナログなメディアを自分でつくります。限られた時間のなかで、情報を集め、編集し、他者と共有するという経験を積みます。